図123のMCプリアンプのイメージです。


緑が電圧利得(軸は左側でdB)、赤がイコライザー通過後の反転入力点での電圧の位相(軸は右側で°)です。
電圧利得が0dBに沈む6MHzの地点での位相が-163°まで回っているので発振する可能性があります。


これは位相補正を120Ω+510pFあたりにしたほうが良いのではないか、と以前どこかでやりました。


利得が0dBに沈むポイントは5MHz程度に下がりましたが、その地点での位相回転は-125°程度に収まりましたのでやはり今回も同じ結果です。


初段ドレイン電流を1mAとしてドレイ抵抗を10kΩにするとなると、2段目の共通ソース抵抗とカスコード用のツェナーDを変更する必要があるので、調整の結果このようになりました。


このときの各部の動作点はこうです。
こうすると初段ドレイン抵抗に10V食われてしまいますので、その分は出力電圧として使えません。最大出力電圧振幅は小さくなります。

位相補正はとりあえず上と同じです。


低域電圧利得は109dBくらいでしょうか。オリジナルイメージでは82dB程度でしたから27dBもの利得アップです。
これで利得が0dBに沈むポイントは5MHz弱ですが、そのポイントでの位相回転は-130°弱ですから、あまり上の状況と変わらないので、もしかすると大丈夫で発振しないかもしれません。


位相補正の適正値を探るために、120Ωはそのままで、C=100pF,200pF,400pF,800pF,1600pFでパラメトリックシミュレーションしてみました。
VDBが利得でVPが位相です。
この場合は1600pFか800pFだと安全というご神託です。
 


次に510pをそのままにして、R の方を100Ω、200Ω、400Ω、800Ω、1.6kΩと変化させた場合です。
抵抗を大きくすると位相が高域で戻ってくれて良さそうなのですが、あわせて高域の利得も延びてしまっています。抵抗を動かしてもあまり上手くありません。


結果、位相補正は120Ω+800pFが最良のようです。


利得が0dBに沈むポイントでの位相が-120°以内に収まりました。
ステップ位相補正Cが800pFというのは大きな感じがしますが、低域利得が非常に大きいのでやむを得ないのだと思います。
これが気になる場合は、真空管MCプリのようにNFB素子の1500pFにシリーズに3.6kΩを入れればこのCは小さくできると思います。

この辺は実機でカット&トライで決めるべきかと思います。



DL−301U用にクローズドゲイン(仕上がりゲイン)を10dBアップする設定で考えます。
その分NFB量が減ってはいけないので、オープンゲインも10dBはアップする設定を考えます。

色々シミュレーションしてみた結果、こういう定数設定になりました。

初段ドレインが3.9kΩ、2段目共通ソース抵抗は2kΩです。ですが2kΩは終段アイドリングを適正値に調整するため、実機では変更が必要なはずです。

NFB回路のゲート抵抗はクローズドゲインを10dB程度アップする関係上150Ωになります。

なお、いつも入れていた出力にパラの820kΩは省いてみました。先生の測定結果を見ると先生は測定時820kΩを入れていないようなので。その分ちょっと特性が良く出ます。



この状態での各種動作点はこうなります。



オープンゲイン(赤)が低域で102dB得られています。ちなみに出力に820kを入れるとこれは99dB程度になります。
クローズドゲイン(青)は1kHzで52.5dBと先生の103用の42dBに対して10.5dBアップです。
これでNFB(緑)は先生の103用の中域で32dB程度と同等の33〜34dB、10Hzで先生の26dBに対して27dB得られています。

位相補正ですが、この場合オープンゲインとクローズドゲインを共に引き上げているため、回路図のとおり、390Ω+220pFで十分です。